腸内細菌叢と脳の関係
幸せホルモンとして知られるセロトニンは以下のように合成されます。
トリプトファン→①→水酸化トリプトファン→②→セロトニン
トリプトファンは腸内で蛋白質が加水分解して生成しますが、これが小腸上皮から吸収されて、その上皮細胞が水酸化して水酸化トリプトファンを作るとされています。すなわち幸せホルモンは腸内で水酸化トリプトファンが生成することが前提となります。トリプトファン水酸化は腸内環境の影響を受けやすく、強いストレスがかかると腸内環境が悪化し、水酸化トリプトファンの生成量が十分ではなくなります。従って腸内環境が悪化すると脳で十分な量の幸せホルモンが生産できないことになります。さらに糞便移植(FMT)で腸内細菌を移植するとうつ病が改善されるという報告があり、この仮説はかなりの支持を得ています。
文献
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