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セロトニンについて

幸福をつかさどるセロトニン

セロトニンは「フォース」

セロトニンは小さな小さな分子で目には見えないものですが、科学者の間では幸せ物質と呼ばれています。映画「スターウォーズ」に出てくる〈 目には見えないが宇宙隅々に満ち満ちているフォース 〉を御存じでしょうか?そのようなものだと言えるでしょう。フォースは宇宙に正義と秩序を与えるものですが、セロトニンは幸福と安寧を与えるものなのです。セロトニンで脳を満たせば、ストレスの支配から脳を開放し自身の未来を切り開くことが可能かも知れません。そして、脳をフォースで満たす最大のカギは「食」にあるのです。

ところで、セロトニンを合成する酵素の遺伝子をノックアウトして脳でセロトニンを作らせないようにすると、二つのことが起こることが知られています。

骨密度が減少する。食欲が減少する。

逆にセロトニンを満たせば二つのことが起こると予想できます。

骨密度が増加する。食欲が増加する。

アンチエイジングを目指すうえでこれは重要な示唆を与えます。すなわち「幸福な人生」と「好ましい食生活」と「運動能力」はセロトニンという分子で強く連環し、あたかもひとつの事象であるかのように存在していると言えます。健康に長寿であるためのセロトニンの果たす役割は限りなく大きいのでしょう。

脳腸相関とセロトニン

 腸(腸内細菌)と脳(精神活動)は密接な関係(脳腸相関)があることがわかっています。すなわち腸内細菌叢が良いと、幸せな人生を送るチャンスが多く、腸内細菌叢が悪いと、幸せな人生を送るチャンスが減ります。

 

 セロトニンはトリプトファンから合成が始まりますが、トリプトファンは多くは動物性タンパク質から酵素で分解されて生成され、そのあとトリプトファンは腸内細菌で水酸化され、水酸化トリプトファンに変化します。

 このようにして水酸化トリプトファンの90%程度が腸内細菌で生成されているのですから、殆ど腸内細菌に依存していると言っていいでしょう。水酸化トリプトファンは腸管上皮から吸収されて血流に乗って、脳血液関門へと送られます。何とその狭き門を自由に通過できるのです。そして脳に到達することができます。さらに脳内で酵素によってセロトニンに変化し、幸せ物質として働き出すという仕組みです。さらに神経細胞の中でメラトニンに変化して睡眠物質として機能するのです。セロトニンは日中に高く、またメラトニンは夜に高いことが知られています。

 このふたつのホルモンによって昼は行動的、夜は休息というリズムが成り立っています。セロトニン(幸せ物質)とメラトニン(睡眠物質)の日内リズムを守ることが幸せに生きる基本と言えそうです。

ストレスとコルチゾン

ストレスの生物学的な定義は、外部刺激に対する生体反応をのべることができ、ストレスに対する生体反応において中心的な役割をもつのはコルチゾンです。コルチゾンは炎症を止める作用が強いですが、同時に強い副作用が知られています。またこのコルチゾンはうつ病の原因のひとつではないかと考えられており、コルチゾンがセロトニンの作用を抑制する可能性も高いのです。コルチゾンはあくまで一時的には素晴らしい効果を持ちますが、長く作用し続ける(ストレスが持続する)とうつ様の症状が強くなる傾向があります。またガンは、持続的なコルチゾンの放出が脳腸相関を崩壊させた結果として現れる可能性は高いと思います。なぜならコルチゾンは、脳腸相関の成立に必要な3つの生理機能を強く抑制するからです。

  • 腸管における消化機能

  • 血液における免疫機能

  • 脳における神経機能

 

これらの機能が持続的に抑制される環境を作り出せば、ガンにつながる可能性は高くなります。特に持続的なストレスに強く影響を受けるのは、NK細胞によるガン免疫です。NK細胞は自然免疫のひとつであり、最も基本的なガンに対する防御機構です。このNK細胞によるガン免疫はコルチゾンによって強く抑制されることがわかっていますから、持続的なストレスがガンにつながる可能性は高いのです。またNK細胞の抗がん作用は感情の影響を受けることを多くの研究者が報告しています。

 

 生活の中には喜怒哀楽の波が生まれますが、NK細胞は、幸福感を感じて生きているなら活性の高い状態を維持し、ガンにはなりにくい状態を作り出してくれます。一方で「怒り」をはじめとする負の感情は、NK細胞によるがん予防のメカニズムを阻害してしまいます。脳腸相関によるセロトニンの作用を享受するためには、負の生体反応を引き起こす外部刺激を適切にコントロールし、ストレスフリーな生活環境を構築する努力も欠かせません。

脳が幸福であること

現在うつ病の原因の学説として有力なのは「セロトニン学説」と呼ばれるものです。セロトニン学説によれば、脳内で「幸福感」を感じることの基本的なことは「セロトニン」が正常に作用することです。またその対極である「うつ病」はセロトニンが正常に作動していない、またはセロトニンが不足していると考えます。抗うつ剤の一般的なものは特異的セロトニン再取り込み阻害剤( SSRI )と呼ばれている化合物で、セロトニンの分解を抑制する作用をもちます。「セロトニン学説」は私たち全員に大変に有益な情報でもあります。脳が幸福であると感じる必要な条件は「幸福ホルモンであるセロトニンが正常に働くこと」であるということだからです。これは多くの方にとって、福音をもたらすものであると思います。幸福であるためには、脳が幸福である条件さえ与えればいいということです。自分の脳の中でセロトニンが正常に働く環境を作ればいいということになります。「食でセロトニンを作動させる」ためには、脳内でセロトニンが正常に働くための以下の3つの条件を整える必要があります。

  • セロトニンの材料である「トリプトファン」を食べる(魚や肉を食べる)

  • セロトニンの合成に必要な「腸内細菌」を整える(野菜や海藻を食べる)

  • 糖質の過剰摂取をさける(良質な脂肪を食べる)

食によるセロトニンの活性化

3つの条件を一つ一つ述べます。

 セロトニンの原料であるトリプトファンを多く含む食事をすることです。トリプトファンは動物性のたんぱく質に多く含まれ、植物性のたんぱく質には少ししかありません。人間が大きな脳を正常に作動させるためには魚・肉を食べる必要があるということです(ただし食べ過ぎには注意が必要です)。これはエネルギーが高いものを食べるということ以上に、脳の機能を正常にします。

 正常な腸内細菌が必要です。トリプトファンは腸内細菌で水酸化される必要があります。この水酸化されたトリプトファンは脳内に自由に移行し、セロトニンになることができます。脳の健康(幸福感)は多くが「食」によってもたらされるということなのです。ですから腸内細菌を正常に保つために発酵食品や海藻や野菜を食べるのは大変に良いことなのです。

 糖質過剰にならないようにする必要があります。糖質過剰になると却ってインスリンが遊離されて血糖値が正常よりも低下する可能性が高いです。神経細胞の中にはひときわ大型の神経細胞があります。この神経細胞は顕微鏡で見ると他の神経細胞とは明らかに形態が異なり大型で、多くの神経細胞から入力を受けています。これらには神経ネットワークのハブのような役割があり、大量のエネルギーを必要とします。セロトニンで作動する神経細胞はこのような大型の神経細胞であり、このエネルギー基質を有効に伝達させるためには、過剰な糖質摂取を控え、その分良質な脂肪を摂取することも考えてみるべきでしょう。

セロトニンとこころ

脳はもっともエネルギーを消費する組織であり、体の中で最もミトコンドリアの機能の影響を強く受けるのは脳です。生物が持つ二十四時間のリズムを「概日周期」といい、通常体内では朝から夜へ向かう時間軸に沿って、朝はセロトニンが多く、夜はメラトニンが多く分泌されています。メラトニンは睡眠物質で、セロトニンは幸福物質。その分泌量のバランスが睡眠と覚醒のメカニズムをつかさどっているのです。この概日周期に従って脳と体が働くことは脳のミトコンドリアの働きぶりによって決まるのです。セロトニンがきちんと分泌されて脳の働きが正常であれば、午後の二時から三時くらいまでは幸福感に満たされていて仕事もはかどるのが普通の状態。セロトニン経路は興奮性のシナプスなのでエネルギーを大量に消費します。そのためにはミトコンドリアに十分な栄養が必要です。脳は車のハイブリッドエンジンに例えることができます。ハイブリッドエンジンの車の燃費がガソリン車に比べて高いのは、ガソリンと電気を両方使い分けているからです。脳もブドウ糖とケトン体のハイブリッドエンジンであるのが最も効率がいい状態です。このブドウ糖とケトン体のハイブリッドで駆動されるセロトニン経路は最高の働きをし人間に幸福感を与えます。脳がうまく働いていないなと思った時には、「甘いものを摂る」ことより「ミトコンドリアを活性化させる」有機酸を含む果物など(できれば旬のもの)を食べる方が良いのです。

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