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ケトン体と受容体

ケトン体は物質としては百年以上前から発見されていましたが、その生理作用の実態がわかり始めたのはここ20年のことです。その間に研究者の間で論文も数えきれないくらい出され、ケトン体のさまざまな効力に関しての高い評価が継続してきました。ここでは、その中でも特に興味深い二つの事柄を取り上げます。
まず、ケトン体は他の有機酸とは異なり細胞膜に特異的な受容体が存在する、という事です。ケトン体の受容体として主に提案されているのは以下の2つです。
HCR2
(エイチカーツー)
HCAR2の発見によって、ケトン体は他の有機酸とは異なる特別な生理作用を持つ分子として認知されるようになりました。HCAR2は水酸基を持つ有機酸により活性化することができますが、特にケトン体において強い活性化がみられ、抗炎症作用や脂肪分解など多くの生理活性に関与しています。
GPR43
(ジーピーアール43)
ケトン体が増えることによっておこる最も顕著な生理作用は脂肪の分解です。
これには特別な受容体が存在するのではないかと多くの研究者が考えていましたが、昨年(2019年9月)にGPR43というタンパク質であることが突き止められました。糖質を制限するとケトン体濃度が増加しGPR43が活性化するため脂肪が優先的に分解されるのです。
ケトン体が、免疫細胞のHCAR2や脂肪細胞のGPR43などの受容体タンパク質に結合すると、免疫細胞や脂肪細胞内のシグナルを増幅します。細胞内のシグナルを増幅することで、炎症反応を抑制したり、脂肪の合成を抑制したりするのです。

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